エレベーターから続く一連の事に

 わたしの頭とカラダがついていけず

 ボロボロと涙を流したまま

 しばらく喋ることが出来なかった。



 彼のスーツにしがみつく手が

 まだ震えている。



 こ、怖かった……。

 久しぶりに強引にされてしまうかと思った。




「……月森、さん?」




 わたしを抱きしめる彼の腕が

 ひと際強くなった気がした。



 名前を呼んだ後、しばらく

 加藤部長は、そのまま

 わたしを抱きしめていてくれた。




「……」




 震えも、涙もおさまってくれたけれど

 困ったな……

 自分の鼓動の音が、ものすごく速い。




「……月森、さん? 落ち着いた?」



「……、は、ぃ」




 今、顔を上げると

 真っ赤な気がするので、上げられない。




「……エレベーターで、何があったんですか?」




 彼の腕の力が抜けて

 わたしを覗き込むように言った。



 顔を見られたくなくて

 さらにうつ向いて、わたしは首を横にふる。




「……降りるときに、目があっただけなんです」