「お昼から戻ったばかりで悪いんだけど、企画部の印南主任に、こちらの書類を手渡して欲しい」



「分かりました」




 差し出された書類を受け取って

 わたしは返事した。



 白崎主任は、経理のおじ様たちの中では

 まだ若い方だけど

 淡々とした物言いと、時計のような正確さ

『冷蔵庫』と言うあだ名がついてしまうほど

 無機的な機械みたいな人だ。



 だから恋愛対象外なのか?

 おじ様カテゴリーに

 すんなりと入ってしまっている。



 そう言えば、白崎主任と加藤部長は

 同期だったんじゃないかしら?



 わたしは書類片手に

 経理フロアを出て企画部へ向かう。



 お使いで企画部へ行くのは初めてだ

 いつも忙しくて人がいないと言われている。



 近道の営業部接客ブースを通って

 企画部へ行こう。



 いつもは通らない社屋の廊下を歩いて

 エレベーターに乗る。



 ポーン、と

 開いたエレベーターのドアから

 一人の他社の営業さんと目が合った。