とりあえず、切り方を説明したら
さっさと退散しよう。
「こうやって野菜を固定して切ると、やりやすくて安全ですよ?」
手本を見せて、同じように
やってもらおうとその場を離れる。
わたしの真似をして
腑に落ちたように笑顔をみせた。
「……」
その顔が、反則でしょ?
と言うほど可愛く見えて……。
自分の顔が熱くなるのを感じた。
「……上手く切れたみたいで、よかったです」
そう言って、自分の班に戻ろうとした
矢先、後ろから彼の声がかかる。
「あの、お願いがあるんですが!」
えっ?
お願い?
「料理を、教えてもらいたいんです……、食べさせたい人がいて」
それで、わき目も振らずに
料理を頑張っていたのか……。
教えて欲しいと言われても
特に教えられるほど
上手い訳ではないから、困ったな……。