彼女の名前は「今井あやめ」さん、彼の名前は「湊純志朗」さん、というらしい。

明るくて元気な彼女と、あまり多くは語らないけれどしっかり彼女に突っ込む彼はとても仲が良さそうで、こうして二人で野球観戦に来ているのが羨ましく感じた。
私と旭くんが二人で野球を見に行くことなんて、たぶんというか絶対にないことだから。


試合は旭くんのチームが勝ち、気分よく飲み始めて一時間ほどが経った頃。

「もう着くみたいです」

携帯に届いていたあの人からのメッセージを見た私がそう言うと、あやめさんが楽しげに「ねぇねぇ」と声をひそめた。

「今から来る人って、もしかして柑奈さんの彼氏?」

「あ……、そう……です」

「へぇー!どんな人だろう!ね、湊くん」

黙々と飲んでいた彼は、あやめさんに同意を求められたものの興味がなさそうに目をそらす。

「来れば分かるでしょ」

「そりゃそうだけどさ、想像するくらい別にいいじゃない」

「普通の人ですよ、地味な感じです」

ヒントを与えたつもりなのに、あやめさんには届いていない。