「…どうせ、忘れちゃうでしょう」

「それでも」

「いいの。そのかわり、由良が忘れないでいて。」

「それは」

「私たちが……兄妹だって。あの人とは…家族だって、ちゃんと覚えていて。」

決まってそう言うと、由良は少し俯く。

若年性アルツハイマーのあの人の記憶から最初に消えたのは私。

ただ、それだけ。







ビニール袋を一つずつ持った私たちの姿が曇り空のしたにうつる。

「…ちゃんと覚えているよ」

小声で言った由良の声はちゃんと聞こえてきて、私は少し笑うように口角を上げた。