スーパーに着いて早々、ケータイが鳴る。
『父』と表示されている画面を見て舌打ちをした。
「何」
通話に応答して第一声にそう吐くと、何も面白くないのにガハハという笑い声と『部長〜〜』という女の甘ったるい声が聞こえた。
『悪いが〜今日も帰れなさそうなんだ』
「そう」
悪いがと言ってる割には嬉しそうな声に、私がため息交じりに返すと、『母さんのこと頼むよ』と言われて通話は終了する。
「…何も、知らないくせに」
人の努力も、自分のお気楽さも。
今頃父は、私の知らない女の人と楽しく「何か」しているのだろう。
もうそんなのは慣れた。
「お母さん、待たせちゃってるし」