リビングをうろちょろするその人の前に歩いて行くと私は手を差し伸べる。 「私が行くので待っててください」 「あらそう?…永和ちゃん、だったかしら。気をつけてね」 「はい」 …これも毎日する会話。 「行ってきます」 私はお金を受け取るとドアノブに手をかけた。 そして、ガチャリと扉が閉まってから小声で言う。 「行ってきます、お母さん」 と、もう一度。