その女の人は、「久しぶり!」と甲高い声を上げて喜び、
「お邪魔しまーす」と、僕の許可も取らずに図々しく部屋に入り込んできた。

勝手に部屋に入り込んでくる図々しさに呆然とする反面、僕は不覚にも見惚れてしまった。

すれ違う時になびいた彼女の黒いサラサラなボブヘアーからは桜のような花のような香りがふわっと広がり、

丸く光を映す瞳には、どこか惹かれるものがあった。
しかし、いくら見惚れてしまうとはいえ、人の家に勝手に入り込むのは一般常識が欠けすぎている。

あの、と僕が廊下を歩いて行く彼女に声をかけると、
彼女は黒ボブヘアをまたふわっとなびかせて振り向いた。