それからの一年は、意外にも長くはなかった。

最初はもちろんショックだったが、良くも悪くも人間は、
どんなに辛く切ない出来事が起きても、時間が経てばある程度は平気になって言ってしまうものだ。

それに僕は、最後の最後、ひなたが僕の名前を呼んでくれて、きっとそれだけで十分で、嬉しくてたまらなかったのだろう。


友達のことや家族のこと、自分のこと、そして一度は僕のことも忘れた彼女が、

名前を呼んで、あの公園に一人で来て___。

そんな姿を見たら、自分の中にあった何かが軽くなった気がして、立ち直るのも確かに早かったと思う。


僕にはもしかしたら、“ひなたに忘れ去られる”ということが怖くて気がかりだったのかもしれない。

もちろんひなたがこの世から去って、二度と会えないのはどうしようもなく辛いし、何度も何度も泣いて一日を過ごした。
今だってたまに。

だが、あの時のひなたの声は、僕の名前を叫んだひなたの声は、紛れもなく僕の愛したひなたの声だった。

あの声に応えるためにも、僕は毎日を前よりも前向きに過ごす必要があるのだと思う。

それからの僕は彼女がいなくなったからといって、残りの一年間を楽しまなかった訳では無い。

高校の仲間達とあのお祭りにも行った。

康平とも何度も映画を観にいった。

一人で時々あの公園で夜景も見たりした。