「やっぱり、脳癌の症状の可能性が高いの。」

わかっていた。
わかっていたけど、一番聞きたくなかった答えだった。

「でも、脳癌が影響で、記憶性障害を引き起こす、なんていったケースは今まで私も耳にしたことがないのよ。

昨日思い出せなくなってしまったというクラスメイトの事は思い出した?」

その質問をされ、記憶を探ってみるが、
どう頑張っても思い出せず、いいえ、と返事をする。

女医さんはそっか…と呟き、その言葉が、また私を不安へと引きずり込んだ。

「もしかしたら、このまま少しずつ、記憶が無くなっていくかもしれないわ。」