それは、突然の再会。
今日は一段と空と海が綺麗だ。
透けるような青空に一筋の飛行機雲が伸びていて、
波が静かに音を立て、白い飛沫をあげてくだける。
そんな綺麗な空と海に反比例するように
あたしの心は曇っていた。
こんな日は彼を想い出す。
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「 …ちゃん? 麻衣ちゃん? 」
名前を呼ばれて我に返った。
麻衣 「 ごめん! なに? 」
「 大丈夫? 今日はやけにぼーっとしてるね 」
そう言って、慧太くんが笑う。
いつもなら素敵だなと思える彼の笑顔も
今日は冴えない。
それは、あたしの心が曇っているからだよね。
慧太 「 えっと、今日は空と海が綺麗だなあと思って… 」
麻衣 「 そうだねえ、まだ暑いし、もう8月も終わるのに… 」
8月も終わり。
もうそんな季節なの?
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あたしは再び自分の世界へと入り込んだ。
あたしにとって1年で1番、切ない日が近づいている。
8月28日。
そう、その日は……。
慧太 「 麻衣ちゃん、今日はもう帰ろ。家でゆっくりしよう 」
慧太くんがあたしの顔を覗き込んだ。
やばい、またぼーっとして
慧太くんに気を遣わせちゃった。
あたしは浜辺で慧太くんと別れた。
慧太くんは、今付き合っている人で
あたしは彼との結婚になかなか踏み切れずにいた。
小野田 麻衣 ( オノダ マイ )
これがあたしの名前。
あたしも、もう24歳だしそろそろ結婚も考えないと…。
でも…。
そう考えるのは、あたしの心には
まだ、彼が住んでいるから。
17歳のときから4年、あたしは彼と付き合っていた。
17歳。 あたしにとって生まれて初めての
" 彼氏 "
という存在。
矢野 洸介 ( ヤノ コウスケ )
あたしは彼が大好きだった。
けど彼は…
3年前の8月……。