そんな特殊な経歴持ちのせいか、『もらわれっ子』のアタシは、入学した小学校で仲間外れにされたり、無視されたり持ち物を隠されたりと、まぁアタシは世間一般で言う『虐め』にあった。
意地悪や嫌がらせをされる度に「世の中は理不尽だな」とは思ったけど、施設を出たばかりで孤独に慣れていたその頃のアタシは、別段それを何とも思わなかった。
ただ教室の窓から見える空を見つめながらこんなことを想っていた。
『現実(ここ)じゃない、どこか別の世界に行けたらなぁ』って。
別の世界――。誰の目も気にせず、自分らしく生きられる世界。
穏やかで何となく毎日が平和に過ぎていく世界。
それがアタシが唯一望む世界だった。
表面上では「どうってことない」とうまく取り繕っていた。
それでも小さかったアタシの心の中には、常に周囲と交われない孤独と先の見えないこの世への絶望、どうする事も出来ない現実への諦めが渦巻いていたのかもしれない。
今考えてみると、何て暗い思考回路をしていたのだろう。
クラスメイトの間やネットでよく聞く『中二病』とか言うそれそのものだ。
でもそんな考えも、父親の仕事の都合で何度となく転校する度に段々と薄れていった。
転勤族だった父親には感謝してもしきれないくらいだ。
初めてクラスメイトに話しかけられて、友人と呼べる同級生達の輪の中に入れた時、アタシは誓った。
極普通の女の子として『平凡』に生きていくんだって……。