研修も三日目に入った昼だった。
店員と客の役に別れロールプレイングをしていたとき、事務仕事をしていた店長がひょっこり顔を出した。
「おい、何か欲しいものある?」
店長の指は壁に掛けられたホワイトボードを示しており、そこには皆が店に必要ではないかと思うもの(主に消費物)が思い思いに書かれていた。
「あ、私、ビニール手袋が欲しいです!」
客の役で鉄板に向かいメニューを広げていた私は、思わず立ち上がり店長の傍に行った。
「ビニール手袋? 何に使うの」
「漂白してあるダスターを水洗いするのだとか……他にも、肌が弱い人には使い道ありますよ、きっと」
私の肌は特別弱いというわけではなかったが、それでも漂白には負ける。
毎日夜のうちに漂白されたダスターをバケツから出して洗うのだが、強力な薬に指の爪周りはボロボロだった。
「ふーん……手袋ね。あと、何か色々入れるプラスチック製の……」
店長はぶつぶつと言いながら小さな紙にボードの文字を写す。
時折、あ? 何に使うんだ、これ、とか小さな声で言いながら。
私がそんな様子に踵を返すと、店長にあんた、と呼び止められた。
「はい?」
思わず自分を指差し訪ねる。
「あんた着いてきて。色々買うもんあるし」
「えっ」
彼はそう言うと返事も出来ない私を尻目に事務所へ入り、車の鍵と財布を手に戻ってきた。
店員と客の役に別れロールプレイングをしていたとき、事務仕事をしていた店長がひょっこり顔を出した。
「おい、何か欲しいものある?」
店長の指は壁に掛けられたホワイトボードを示しており、そこには皆が店に必要ではないかと思うもの(主に消費物)が思い思いに書かれていた。
「あ、私、ビニール手袋が欲しいです!」
客の役で鉄板に向かいメニューを広げていた私は、思わず立ち上がり店長の傍に行った。
「ビニール手袋? 何に使うの」
「漂白してあるダスターを水洗いするのだとか……他にも、肌が弱い人には使い道ありますよ、きっと」
私の肌は特別弱いというわけではなかったが、それでも漂白には負ける。
毎日夜のうちに漂白されたダスターをバケツから出して洗うのだが、強力な薬に指の爪周りはボロボロだった。
「ふーん……手袋ね。あと、何か色々入れるプラスチック製の……」
店長はぶつぶつと言いながら小さな紙にボードの文字を写す。
時折、あ? 何に使うんだ、これ、とか小さな声で言いながら。
私がそんな様子に踵を返すと、店長にあんた、と呼び止められた。
「はい?」
思わず自分を指差し訪ねる。
「あんた着いてきて。色々買うもんあるし」
「えっ」
彼はそう言うと返事も出来ない私を尻目に事務所へ入り、車の鍵と財布を手に戻ってきた。