彼女の心に俺は入れないだなぁと思った。

控室の前を通ると、麻結が着るはずだったドレスを着た人が俺に声をかけた。

「あのぅ…」

「何ですか?」

「桑名先生が…」

「あぁ… 兄貴のことですか?」

俺が婚約者の弟と分かった途端その人の顔が安堵に包まれた。

「よかった~。あることを伝えてくれませんか?」