「いやいや、別にいいんだ。ただ、本当に心配してるだけなんだぞ?これからもピアノ弾く機会だってあるだろうし、大丈夫かなって」
謝る俺に、先生は手を横に振りながら、否定してくれる。
なんだか、いい先生だ。この人になら、色々と悩みを打ち明けれるかもしれない。
「…あの、これから、なにかあったら相談してもいいですか?」
俺は先生の、眼鏡の奥にある黒い瞳をまっすぐ見つめながら、質問する。
先生は、一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに頷いてくれた。
「ああ。なんか困ったことがあったら、なんでも相談してくれ」
先生の優しい回答に、俺は心から頭を下げ、「ありがとうございます」と、小さくお礼を口にした。