少し沈黙が流れた。俺も、たぶん先生も、お互いに何て喋ればいいのか、模索している。
 

「…空川」


先に口を開いたのは、先生だった。
 

「ピアノ推薦で入ったからには、やっぱりそれなりにピアノ関連の活動をしてもらわなくちゃならない。でも、今はちょっと無理だろ?」
 
「…やっぱり、途中から、俺のピアノの音おかしかったですか?」
 

俺の問いかけに、先生は弱々しく微笑んだ。
 

「ああ。途中から、まるで殴ってるように弾いてたんだ。気づいてない奴は気づいてないかもしれないが、ちょっとでも音楽に触れたことのある奴なら、たぶん気づいてるよ」
 

だから、あの時一番心配してくれたのは、黒西だったのだろう。
 

黒西はトランペットをやってるって言ってたし、音楽の事だってよく知ってるはずだ。

たぶん、俺の異変にいち早く気づいていたのだろう。
 

「すみません…」