俺もどんなものかと、興味本位で近づいてみた。
すると。
「あ、そういえば、空川もピアノ出来るんだろ?」
一人の、知らない男子生徒が、俺に気づいてそんなことを言い出した。
ドクン
心臓が、跳ね上がる。
「ああ、そうだよね。空川君のピアノ、聞いてみたいな」
「俺も俺も」
一人の言葉を皮切りに、次々とそんな声が出てきた。
最悪だ。まさか、こんな忘れかけていた時に、恐れていた言葉が飛び出すとは。
しかし皆は、そんな俺の焦りなんかつゆも知らずに、俺を見て、ピアノピアノと盛り上がっている。
嫌悪感が生まれる。また、この視線。
なにか、すごいものが見れるんじゃないかって、ワクワクした視線。
分かってる。みんな、別に悪気があるわけじゃない、ただ、本当にピアノを聞きたいと思ってくれているだけだ。