「んなわけないでしょ。友達と話していたら、たまたまあんた達が目に入っただけよ」
 

黒西はそう言って、伊藤の頭を叩いた。そこで伊藤が「何だよ!」と、頭を押さえる。ほんと、小学生みたいな、やり取りだな。
 

いつものように、二人のコントのようなやり取りを見ていると。
 

「お、楽しそうじゃないか、空川」
 

ドアをガラガラと開け、小島先生が中に入ってきた。
 

「あ、先生。こんにちは」
 

俺が軽く解釈すると、黒西が手を叩いて、子供のようにキラキラ光る瞳で、先生を見つめた。


「先生、ピアノ弾いてよ!」
 

え?ピアノ?でも先生って確か、バイオリンとか言ってたような…。


「おう、いいぞ。いっちょ、弾いてやるか」
 

俺が混乱しているのをよそに、先生はノリノリでピアノに集まる。
 

すると、黒西を含め、ほとんどの生徒が、ピアノの前に集まる。きっと、よく先生もピアノを弾いているのだろう。
 

あ、そうか。そういえば、先生ピアノもちょっと弾けるって、言ってたっけ。