少し驚いてしまった。何食わぬ顔で向日葵は使っていたから、まさかあの音楽室が、『旧』音楽室だとは思ってもいなかった。
それでも、俺は二人と一緒に音楽室に向かった。
階段には登らずに、渡り廊下を渡って別校舎に行く。
新音楽室のドアを開けて中に入ると、木の香りが、もあっと鼻の中に入り込んでいた。
やっぱり、新しいんだなと感じる。
「あ、みんな」
後ろから、少し高い女の子の声が聞こえた。
見ると、そこにいたのは教科書を片手に、黒いつやつやの髪を揺らしながら立っている、黒西だった。
「あ、黒西」
「よ。なに、楽しそうにやってたじゃない、教室で」
黒西は俺の挨拶を軽く返すと、少しからかうように、俺に肘を突っついてきた。
「なんだよ、絵里。見てたなら、なんか言ってくれればよかったのに。あ、さては、俺たちのあまりの仲の良さに、話しにくくなったんだな?」