ところが、俺はあることに気づき、心の中でしまったと叫んだ。
 

転校の手続きは、全部母さんがやったから、俺は職員室の場所を知らない。
 

思わず、キョロキョロと見回す。
 

どうすればいいものか…。
 

周りには、たくさんの生徒たちが、校舎の中に入っていく。
 

そうだ、この人たちに聞けばいい。


俺は、生徒の一人に近づいた。
 



しかし。


「…」
 

まただ。
 
声が出ない。
 

声を掛けようとして子は、俺に気づかず、校舎の中に入っていく。
 

いつからだろう?


俺の弱点の一つだった。


部屋にこもりっきりでピアノの練習をしていたせいか、俺は人に声をかけることが出来ないのだ。
 

声を掛けようとすると、喉の奥が何かに詰まったような感覚になり、声が出なくなる。