「当たり前でしょ。友達としても息つまるのに、彼氏としてなんか無理無理!」
 

「なんだよー」と、伊藤は口を尖らせながら、自分の席に着く。
 

そこで俺は、ふと疑問に思ったことを、伊藤に聞いてみた。
 

「そういえばさ、伊藤と黒西って、お互い名前で呼び合ってるけど、仲いいの?」
 
「別に。ただの幼馴染。家近いし、幼稚園の頃から一緒だったから」
 

答えたのは伊藤じゃなくて、なんでもないことのように、爪をいじりながら答える黒西だった。
 

ガラガラガラ
 

扉の開く音と共に入ってきたのは、眼鏡をかけた、体つきの良い男性。
 

「あ、小島(こじま)先生だよ」
 

水田は、嫌そうに呟くと、慌てて元の席にもどる。黒西も同じだ。
 

そっか。あの時名前聞けなかったけど、この先生、小島先生っていうんだ。
 

そう考えたとき、俺はもう一つある記憶を思い出した。
 

『俺もおんなじ時期あったから』