俺は、そんな黒西にため息をつくと、自分の席に座った。
 

「エアーピアノを弾いたのは、緊張をほぐすためだよ。ピアノを弾いてる時だけは、緊張を忘れられるから、あの時も忘れようとしてただけ。ピアノはまあ、嫌いかな」


俺が喋り終わって、またもや沈黙。


でもさっきとは空気が違う。聞きたい、でも聞けない、微妙な空気が、そう言っている。


本当はみんな、俺聞きたい事、たくさんあるだろう。 一番悟ってるのは俺だが、はっきり言って、誰に何にも、今は聞かれて欲しくなかった。


すると、伊藤が俺の肩に手をのせた。
 

「違うんだよ、空川。俺が聞きたいのは、そういう事じゃないんだよ」
 

伊藤が俺の顔に自分の顔を近づけて、にこっと笑った。
 

「なんで、内向的なお前が、一日もたたずに女の子の名前で呼び合うほど、仲良くできたんだ?」
 
「…は?」
 

何言ってんだ、こいつ?