三人が俺に対して驚いていることは、なんとなく態度で分かったが、理由までは分からなかった。
「だってさ、自己紹介の時にオドオドした奴って思ったら、突然エアーピアノ弾き始めてさ。でも、ピアノは好きじゃないんだろ?」
伊藤は窓の手すりに体重を任せ、何でもない事のように言った。
だが、俺は驚きから、自分の手に力を込めた。
「…なんで、知ってるんだよ。俺がピアノ好きじゃないって」
「んあ?絵里から聞いたんだよ。こいつがピアノ好きなんでしょって聞いたら、お前めっちゃ動揺してたらしいじゃん。だから、ピアノ好きじゃないんだろって思ったの」
伊藤の言葉は最後まで聞かずに、俺は黒西の方に顔を向けた。
あの態度でバレていたんだ。というか、気にさせていてしまったのか。
黒西は、ごめんと、何も言わずに、申し訳なさそうに手を合わせている。