今思えば、向日葵とは出会った直後から、普通に話せた。
あれだけ人と話すのが苦手で、伊藤達とも話せるようになるのにはだいぶ時間がかかったのに、不思議なくらいに向日葵とは話せた。
それに、向日葵のあのピアノを弾いているときの姿。
本当に幸せそうだった。嘘だろって思わない、思えないくらいに、幸せそうだった。
本当は目が見えてるんじゃないか。いや、今見えてるはずのものよりも、もっとすごいものが彼女には見えていて、それを見て楽しく弾いてるんじゃないかと、今更思う。
なんだろう。伊藤達と出会ったときも嬉しかったけど、なんだかこう、向日葵を初めて見て、向日葵と話したあの瞬間、なにか楽しいことが始まるんじゃないかって、ワクワクした。
ポン
俺は、静かになった音楽室で、一つ音を叩いてみた。
いつもよりも、音を軽やかに感じた。