小さいころから、俺はピアノの練習ばっかりさせられていた。
ちょっとでも、息抜きをしようとしたら怒られ、毎日ピアノと向かい合って練習。
ピアノの教室だって、いくつも掛け持ちして、一時期は本当に死ぬかと思った。
勉強だって、友達との遊びだって、全部なし。すべてを、ピアノに注ぎ込んでいた。
じゃあ、そこまでして、ピアノを練習する理由。
そんなもの、あるわけない。全部、親の言いつけだ。全部親の言いつけでやっているのだ。
いわば、操り人形。
とはいっても、別に親に反論する気はさらさらない。
このピアノのスキルのおかげで、俺はこの高校に入れたわけだし、きっと将来もピアノ関係の仕事に就くと思う。
最初は、ピアノが嫌で嫌で仕方がなかった時期もあったが、いつの間にか、その”嫌”という感情さえ、俺は失っていたのだ。
それだったら、それで別にいい。
将来も約束されて、ピアノを練習して、すべてがうまくいくのであれば、俺は何とも思わない。