葬式には、向日葵が盲学校時代に仲が良かった人たちや、淀野先生、そしてあの耳の聞こえない、治夫君も来ていた。
 

「ほんと、夫にも子供にも先立たれて。私、何か悪いことしたのかしら?」
 

向日葵のお母さんはそう言いながら、ハンカチで涙を拭う。
 

前を見ると、沢山の花に彩られた壇の真ん中に、向日葵の写真が飾ってある。
 

『日向君!』
 

そうやって、今からでも俺の名前をよんで、写真から飛び出してきてくれるんじゃないかって思うくらいに、いつものあの笑顔で写っている。
 

あれだけ当たり前だった、向日葵と笑いあう日々。
 

もう、二度と、あの幸せを味わうことはできない。
 

今度こそ、本当に。
 

「あ、そうそう。向日葵がね、亡くなるちょっと前に書いた、日向君宛ての手紙があるのよ」
 

「お、れのですか?」
 

向日葵のお母さんは、喪服につけられているポケットから、一枚の紙を出した。
 

「息を引き取る二時間前に、突然紙とペンを持って来てっていわれたの。でも、あの子いつもは、点字を使ってるから、字はたどたどしいんだけど、それでも一生懸命書いてたわ」


俺は、向日葵のお母さんから、その紙を受け取った。


「あの子、きっと死期を悟ったのよ。全く、親よりも先に日向君に書くなんて、よっぽど大切に思っていたのね」