…でも、はっきりいえば、そう思えるのは、ほんの少しだけ。
たぶん、『死』を直前に迎えた人は、きっと…。
俺は、向日葵を改めて見る。
出会った直後なら気付かなかったと思うけど。
向日葵は、拳をぎゅっと強く、握りしめていた。
「…向日葵。俺の前では、本当のこと言っていいんだぞ?」
我慢なんかしなくていい。
今まで、向日葵はさんざん、我慢してくれた。
だから今日は、絶対に我慢なんかさせない。
「俺は、向日葵の気持ちが分かるように、努力する。だから、我慢しないでくれ」
その瞬間、向日葵は子供のように顔を歪めると、俺の胸に、勢いよく顔を押し当てた。
赤ん坊が泣くように、大声で泣き声をあげる。
俺が、この前向日葵の余命を聞かされた時よりも、ずっと大きな泣き声だった。
シャツが向日葵の涙でぬれて、徐々に広がっていくのを感じた。