ちらっと時計を見ると、もうすぐ十二時になろうとしていた。
昼の時間帯でもあり、外の食べ物屋は、ものすごく混んでいる。
衣装も着替えなくちゃならないし、三時半ごろが門限ってところだろう。
そういえば、黒西は十二時から吹奏楽部のコンサートがあるみたいだし、まずは、黒西の部活に行ってみるか。
そう思い体育館に行ったはいいが、体育館は既に人込みで溢れかえっているため、なんとか前列の一席を取るので精いっぱいだった。
やっぱり、生徒はそれぞれの予定があるのか、観客席に座っているのは、保護者や、大学職員、そして俺みたいに、一人で来た人たちがほとんどだった。
俺は、とりあえず持っていた楽譜を椅子に置いて、飲み物を買いに行こうとすると、トランペットを持った黒西と会った。
「あ、空川。来てくれたんだ」
俺に気づいて、黒西は駆け寄ってくる。
「ああ。他の奴らのも見たいから、一曲しか見れないと思うけど」
「それで十分。ぶっちゃけ言うとね、四時ごろまであるんだけど、休憩とか挟んでるから、事実上は九曲くらいしかやらないのよ」