理由が頭から溢れるように出てきたけど。
やっぱり一番しっくりくる理由は、『俺が向日葵ばっかり見ていた』からだろうか。
「ごめんね。今の私には、空川の言葉を真っ直ぐ受け止める勇気はないから。なにも言わないで、これまで通り話してくれない?友達として」
「…もちろん」
そう返した。答えはそれしかないから。
黒西は勇気がないって言ってたけど、俺は十分、黒西は勇気のある奴だと思ってる。
異性としての関係になれなくても、純粋に友達としていたいと思ってる。
「黒西や水田や伊藤がいたから、俺はいろんなものを手に入れれたんだ。お前らに出会えて、友達になれて、本当に良かったと思ってる」
そう。最初に俺に話しかけてくれたのも、眩しいくらいにまっすぐな明るい姿を見せてくれたのも、全部この三人なんだ。
俺にとって、黒西や水田や伊藤は、大切な大切な仲間だ。
黒西は、なにも言わずに微笑むと、「ありがとう」と言って、階段を駆け降りていく。
ドアの古びたガラス窓には、満足げに笑っている、俺自身の顔が写っていた。