今まで全然元気だったし、一回コンクールまで、電車に行ったこともあるのに、なんでそんな急に…。
 

あ、もしかして。
 

「向日葵。もしかして、俺が向日葵の病気の事を知らなかったとき、無理してたのか?」
 

向日葵が握っていた飲み物のコップが、微かに音をたてた。
 

やっぱり、図星なんだ。
 

「…ごめんな、そんな無理させちゃってたなんて」
 

「そんな、謝らなくてもいいよ!日向君知らなかったんだし、私だって、結構秘密にしちゃってた部分もあるわけだし」
 

すると、向日葵は不安げな顔から一転、にっこりと笑った。
 

「これからは、ちゃんと日向君に言うから」
 

向日葵が、俺の事を頼りにしてくれている。しっかりと、何も隠さずに、俺と向き合ってくれている。
 

俺は、そのことに嬉しくなりながら、「ありがとう」と言った。
 





「…あの子、かわいそうな子ねぇ…」
 


…え?
 

突然、どこからか、そんな声が聞こえた。本当に小さな声で、俺だから分かるくらいの、小さな声が。
 

かわいそうな子。分からない、まだ決まったわけではないけど、これはたぶん向日葵の事を言ってるような気がする。
 

俺は、周りを注意深く見渡した。


すると、結構離れた、四人組の主婦のような、女の人たちが、こっちをチラチラと見ては、なにやらぼそぼそ言っている。