「なんですか?」
 
「もしかして、お連れの方は、盲目でいらっしゃいますか?」
 

思わず、受け取ったレシートを、クシャッと握りしめた。
 

「そうですけど、なにか?」
 
「あ、いえ、別になにも…」
 

俺は、慌てている女の人を、思わず睨みそうになり、急いで背を向けると、向日葵のところに向かった。
 

まったく、普通の店員まで、あんな言い方をするなんて、どうかしてる…。
 




「ハアハアハア…」



「…ひ、向日葵?」
 

俺は、ひきつった声を出すと、慌てて向日葵に駆け寄った。
 

向日葵が、少し荒い息をしながら、座り込んで、棚にもたれかかっていたから。
 

「あ、日向君。ごめん、ちょっと疲れちゃって…」
 
「それはいいけど…。大丈夫か?少し休んだ方がいいんじゃないのか?」
 

俺が向日葵の肩を抱き上げると、向日葵は弱々しく頷いた。
 

「うん、ごめん…。ちょっと、休憩…させて」
 

かすれた声に、俺の中で、さらに恐怖感が襲ってきた。
 

とりあえず、向日葵を近くのカフェに座らせると、俺は二人分の飲み物を買って、向日葵に渡し、ついでにピアノの置物も渡した。
 

「大丈夫か?」
 
「うん。だいぶ落ち着いたよ。ごめんね、心配かけちゃって」

「いや、それは全然大丈夫だけど」
 

向日葵は、俺の買ってきた飲み物を飲む。