衝撃的な発言にもかかわらず、向日葵はただただ愛おしそうに、ピアノの置物を撫でている。
向日葵は、もうすぐ死ぬ。この言葉は、本人がそう認めたと表せる言葉だ。
何も言えない。何を言っても、多分俺は、また向日葵を傷つけてしまうような気がする。
頭のいろんなものが、変形して混ざり合っていく。混乱してきた。
俺は、ふーっと息をつくと、目を閉じた。
言いたくない。でも、言わなくては。
自分も逃げない、そんな俺の気持ちが、向日葵に届くように。
俺は、向日葵と向かい合った。
「…もし、万が一そうなったときは、俺がそれを、納棺するよ」
向日葵は、俺の言葉に顔を上げると、驚いたような、何か意志を宿したような、そんな瞳と表情を、俺に見せてきた。
でも、すぐに表情を柔らかくすると、「よろしく」、と小さな声で言った。
沈黙が流れた。本当に、何て喋ったらいいのか分からない、気まずい雰囲気。
「…じゃ、じゃあ、これ二つ買ってくる」
俺は、沈黙を破ると、素早く木でできたピアノの置物を、二つ手に取ると、レジに向かった。
「これ、二つよろしくお願いします」
「はい」
おれは、財布の中からお金を取り出した。
「あの、失礼なんですが…」
俺がお金を女の人に渡すと、その人が声を掛けてきた。