「こ、声がでかいって。皆見てるぞ…」
 

慌てて向日葵の耳元でささやく。


よりたくさんの人がこっちを見ってるような気がして、とりあえず向日葵と二人で、隅に移動した。
 

「もう、日向君こそオドオドしすぎだよ。私はもう、視線なんか気にしないんだから」
 
「え?でも、向日葵嫌だって…」
 
「嫌だけど、もう気にしないの。私は、自分の道を歩いてるんだから、横にいる他人なんか、気にしないの」
 

『自分の道』
 

俺が、向日葵に説得した時、使った言葉だ。
 

届いていたのか。いや、届いてるかどうかわからないけど、少しは心の中に残っていたのか。
 

もう、それだけで嬉しくなった。向日葵の中に、少しでも俺がいる証拠だから。
 



「あ、そうだ!私、なんか日向君と、おそろいのものが欲しい!」
 

向日葵が、また大きな声を出す。でも、さっきよりかは、視線は気にならなくなった。
 

「おそろいのもの?っていうと、なに?」
 
「いや、だからさぁ。なんかこう、同志の証みたいな?」
 

同志。そう、俺たちは同志なんだ。そんな関係でしか、ないんだ。
 

「…だったら、ピアノに関係するなにかとか?」
 

複雑な気持ちのまま、俺はアドバイスをする。
 

すると、向日葵が手をポンと叩いて、俺を指さした。
 

「そうだ、それだ!でも、ピアノ関係っていうと何?楽譜とか」