「だいたいね、私は別に、死んでもいいって思ってるんだ。盲目だから、ちゃんとした職業になんか就けないし、親に迷惑かけるだけだし、一緒にいてくれる人だっていない。こんな必要とされてない人間は、早く死んじゃったほうがいいんだよ」
あまりにも弱気な向日葵の言葉に、俺は慌てて否定した。
「そんなこと言うなよ!向日葵にはピアノだってあるし、向日葵のお母さんだって優しい人じゃないか。それに、一緒にいてくれる人だって…」
「もう、空気が読めないなぁ、日向君は」
一緒にいてくれる人だって、俺がいる。そう言おうとしたところで、向日葵が明るい声で遮った。
「そう思わないと、死ぬことが怖くなっちゃうでしょ?もしも、今変に希望を持ったりしたら、未練が生まれちゃう。だから、そう思わなくちゃいけないの。無駄なあがきをしないで、仕方ないって受け止めなくちゃいけないの」
すべてを諦めたように、向日葵は笑った。
『どんなに努力をしても、どうにもならないことがある』
向日葵がそう言って、諦めたように笑った時と、一緒の表情だった。
どうにもならないことがある。
向日葵は、自分の避けられない余命の事を考えながら、俺にそう言ったのだろう。
でも…。
それでいいのか?そんな風に、何もかも諦めて、努力しないで。