「日向君は、どこまでも私を追いかけてきた。その純粋過ぎる姿に、私がどんなに傷ついたか分かる?」
言葉こそは攻めていたが、口調は弱々しく、とても優しいものだった。
「私、すごい頑張ったんだよ。なんとか日向君から離れようって、必死で感情を押し殺して、でも心の中では、嫌われたくないって、私自身が叫んでてさ。だから、もう限界」
向日葵は笑った。笑っているのに、瞳は濡れていて、小さな涙が浮かんでいた。
「私は、もう日向君の事、嫌いになれない。日向君に…嫌わ、れたくない…!」
とうとう、向日葵の瞳から、涙が零れ落ちる。すーっと落ちていく涙は、あまりにも綺麗だった。
こっちまで、目薬を差されたように、目が痛くなってくる。
それでも、俺は舌を噛んで、必死に涙が出るのを堪えた。
「大丈夫。絶対に、嫌わないから」
俺は、声が涙交じりにならないように、明るく、優しく向日葵に言った。
なんだって構わない。余命が九ヶ月で、俺が向日葵から離れるわけがないだろう。
それを知ったって、俺は向日葵の事を嫌いになんてならない。
ただ、もっとずっと一緒にいよう、それしか言葉が浮かばない。
「…おかしいか、な?日向君と出会って、三ヶ月しか経ってないのに、日向君の事を想うだけで、嬉しくなったり、泣いたりするって、おかしいかな?」