耳の聞こえない男の子の、あの忠告。
あれも、あの子が向日葵の事を知っていたのなら、無理はない。
なくなっていたパズルのピースが、一瞬にしてすべて当てはまっていった。
「私が事故に遭って、失明しちゃったのは知ってるよね?その前から、私はすごい体が弱かった。でも事故に遭ったときはひどい重傷で、結構無理な手術をしちゃったの」
何も言わない俺に、向日葵は外に目を向けながら、ポツリポツリと語り始めた。
相変わらず、雨は強く、この部屋に降り注いでいる。
「そこで、後から先生に、これから何があるか分かりませんって言われた。たまにめまいがしたり体力もちょっとないだけだし、その頃は聞き流してた。なのに、ある日突然、高校に上がったときに、二年が限界ですって言われた。原因も分からないし、もちろん治し方も分からない。ただ、事故の手術が問題だったって言ってた」
原因も分からない、治し方もない、余命は二年。
俺が戸惑ったんだ。向日葵は自分の事だし、当然俺以上に戸惑っただろう。
その時の向日葵の心情を想像するだけで、俺は血流がすべて逆流するような、気持ち悪さを感じた。
「それから、私はそれまで行っていた、盲学校をやめて、普通の学校に入ったの。盲学校だと、皆私と話してくれて、別れるとき辛いけど、普通の学校だったら、誰も私になんか話しかけてこないし、ちょうどいいかなって思って。そこで、日向君と出会ったんだよ」