向日葵ともう一度話したい。謝りたい。
いくらそう思ったところで、本人がいなかったらどうにもならないし…。
カチャ
ドアが開く音がした。はっと顔を上げると、ドアの向こうから、向日葵のお母さんが顔を出している。
「よかったら、入って」
戸惑はなかった。
家に招待するというのは、どうであれ何かの前兆に違いない、そんなことは考えなくても分かったから。
とにかく、向日葵と再び近づくためなら、俺は頭だってよく切れるんだ。
「はい」
俺は、そう返事をすると、向日葵の家に入れさせてもらった。
相変わらず、豪邸の家。向日葵のお父さんは、プロのピアニストだったって言ってたし、きっと相当稼いでたんだろう。
「ごめんね、汚いけど。そこのソファに座ってくれないかしら。お茶入れるから」
「あ、ありがとうございます」
とりあえず、小さくお礼を言っておく。
そして、どう考えても汚くはない、黒革で出来た高級そうなソファに、少し遠慮しながら腰を下ろした。
どうも落ち着かなくて、自分の指をソワソワさせる。
向日葵と一回ここに来たときは、緊張なんて全然なかったのに、向日葵がいないだけでこんなにも違うのか。
「日本茶でいいかしら?」
向日葵のお母さんは、急須と日本茶の元、そして二つの湯飲みを、お盆に乗せて持ってきた。