「私、日向君の事嫌いなの。私の事何にも知らないくせに、上から目線で。ほっといてって言ってるのに、執拗に関わってくるんだもん。うざったらしくてたまんない。もう、声も聞きたくなくなった。二度と、私に話しかけてこないで」
 

「そんな…!」
 

冷たすぎる。

思わず言い返そうとしたが、向日葵は足早に、逃げるように音楽室から出て行ってしまう。
 

『声も聞きたくない』
 
『話しかけてこないで』
 

なんで?こんなに謝ってるじゃないか?今度こそ、向日葵の心を分かるように、努力しようって、そう決めたのに、なんでそんな…。
 

向日葵と出会って、向日葵の性格を知って、俺は絶対に向日葵とは喧嘩にならないと思ってた。

向日葵は全く怒らなくて、いつもおちゃらけてる人だと思ってたから。
 

いや、きっと向日葵はそういう人だ。

そんな人を怒らせてしまうくらい、俺はひどいことを言ってしまった。そうなんだ。
 

思わず足から崩れ落ちる。泣きそうになって、目が痛くなるけど、涙は出てこない。

出ないように、踏ん張ってるから。
 

泣くな、日向。まだ諦めるな、日向。
 

俺は、自分にそう言い聞かせると、立ち上がった。
 

もう、何だって構わない。ストーカーでも、変態でも、何でも。


俺は、向日葵ともう一度、笑いあいたいだけなんだ。誰に何と言われようと、その気持ちは変わらないんだ。