許してくれる、なんてどこかで自信を持ってた自分が、バカらしい。

いつもの向日葵みたいに、「いいよ、そんなのー」って、笑い飛ばして、また一緒にピアノを弾ける、なんて考えている自分も、バカらしい。
 

なにより、向日葵にゆっくり寄り添おう、と平気で思えた自分が、惨めでならない。
 





…でも、でも。
 

向日葵は、窓の方に顔を向けた。見えていないのに、まるですべて見えてるような瞳をしている。
 

白い肌。小さな鼻に、茶髪の髪の毛。
 

俺は、ぐっと自分の足の指に、力を入れた。
 



それでも向日葵には嫌われたくない。
 

どんなに惨めでも、押しつけがましくても、気持ち悪い男でも、俺は向日葵と一緒にいたかった。

その気持ちが、何よりも勝っていた。
 

「向日葵。俺の事、嫌ってるんだろ?怒ってるんだろ?ごめん。本当に、何百回でも謝るから。今度は、ちゃんと向日葵の事、考えるから。だから…」
 



「…許さない」
 

向日葵が、俺の言葉を遮って、呟いた。

この前怒鳴られた時と同じように、背中に寒気を感じるほど、冷たい口調だ。
 

涙が出てきそうになる。鼻をすするが、向日葵の表情は変わらないので、俺が泣きそうになってることには気づいていないのだろう。
 

それでいい。泣いてるところなんて気付かれたら、さらに気持ち悪さ倍増だから。