何を言われるんだ?俺は、近くなった向日葵の顔を、ドキドキしながら見下ろす。

向日葵の焦げ茶色の髪が、窓から差し込む太陽に照らされ、金色っぽく輝いていた。
 

向日葵は、目を瞑ると、深呼吸をして、再び目を開けた。
 



「…今日で、終わりだね」
 


「え?終わりって…何が?」
 


向日葵の小さな、息を吐くような声に合わせて、俺の声も小さくなっていた。
 


『終わり』。今になって考えてみれば、俺はその意味を、なんとなく理解していた。

でも、認めたくなくて、ちゃんと向日葵の口から聞きたくて、聞き返したんだ。
 

「最初にあったときに、約束したでしょ?三ヶ月、私に頂戴って」
 

心の中も、頭の中も、ペンキを思いっきり投げつけられたみたいに、真っ白になった。
 

そう、以前の俺が、ピアノを弾いてる時に、感情がなくなって心が真っ白になっていく感覚。

全てを失って、何にもないところに立たされる。全く同じ感覚だった。
 

その間にも、向日葵は話を続ける。
 

「その三ヶ月の間に、日向君のピアノに感情を入れるって約束したじゃない?まあ、意外と簡単にそれは解決したんだけど」
 

理解したくなかった。要約すれば、向日葵は俺と離れる、という事だ。

それは、何がなんでも信じたくなかった。一番聞きたくない、一番恐れていた答えだった。