でも正直、許してくれるような気もどこかでした。
 

『ようやく来た。待ってたよ、ずっと』
 
『私ね、日向君に伝えたいことがあるの』
 

もしかしたら、向日葵も俺に、謝罪しようとしていたんじゃないか。

だから、ずっと待っていてくれたんじゃないか。
 


 




「…もう、六月の最後だね」
 

向日葵の第一声は、そんなものだった。「え?あ、ああ」と、思わず混乱してしまう。
 

でも、向日葵はさして気にしない様子で、話を続ける。
 

「もう、日向君と出会って、三ヶ月が経つね」
 

向日葵の心地よい声。

今まで、きゃぴきゃぴとした声ばっかりだった分、艶やかな声に、ドキッとしてしまった。
 

「三ヶ月って、予想よりも早いんだね」
 

やたら、『三ヶ月』と言う言葉を、強調してくる。


一体向日葵が何を言いたいのか、俺にはさっぱり分からないので、俺は何も言わずに、向日葵の言葉を聞き続けた。
 

しかし、向日葵の言葉はそれ以上続かない。終わりか?と思ってると、向日葵が俺に一歩近づいた。


目を合わせずに、切なく微笑む。

電車の中で、『どうにもならないことがある』と言ったときのように、何かを諦めたような、そんな表情に見えた。