「図星みたいね。っていうか、あんたが音楽室に来てる時点で、向日葵さん関連ってことは、簡単に分かるんだけど」
なるほど。占いと言うよりも、探偵のような頭を、黒西は持っているという事か。
俺は、全身の力が抜けて、ドカッとピアノの椅子に腰を落とした。
ふーっと一息つく。案外、思いっきり吐き出してみるのもいいかもしれない。
「…喧嘩した」
「え?」
「だから、喧嘩した。向日葵と」
鍵盤に突っ伏した。ジャーンと、一度に大量の、ピアノの音が聞こえる。
「え?い、いや、だって…。空川、めっちゃ仲良さそうに、向日葵さんの事話してたじゃない。調子悪くなってからも、和仁のからかいには、本当に恥ずかしそうに応じてたし」
「演技だよ、演技。心の中では、辛くてたまらなかった」
俺は、そのまま黒西に全部話した。
向日葵の周りの人が、執拗に不審な態度をとること。
コンクールに向日葵を誘ったら、思いもよらない言葉を返された事。
それにイラっとして、思わず言い返したら、向日葵に『うるさい!』と怒鳴られてしまったこと。
話せば話すほど、気分が落ち込んできた。
ピアノを弾くことが、苦痛で苦痛でたまらなかった、あの時代。あの時代に、帰っているような気持ちになった。
「…分かった。話は分かった。なるほど、そういう事だったのね…」