いつも横にいて、ずっとニコニコしてて。面白くて、子供っぽくて、でも、たまに感慨深いことを言う。
それが向日葵で、それが、俺が初めて好きになった相手だった。
大らかで優しい向日葵が、あんなにも恐ろしく怒鳴った。だからこそ俺は、よっぽどの事をしてしまったんだろう。
「何してるの、昼ご飯も食べないで。ダイエット?」
女の声。向日葵?と思ってドアに顔を向けると、そこに立っていたのは、ドアにもたれかかっている、黒西だった。
「なんだ、黒西か…」
「なに、その言い草?最近元気ないから、心配してきてやったのに」
驚いた。できるだけ、三人の前では平然を装ってたし、向日葵関係で、伊藤がからかってきても、今までとおんなじ態度を見せていたからだ。
「みんな、気づいてるのか?」
「まさか。私だけに決まってるじゃない」
なんで黒西だけなのかは分からないが、俺は何も言わずに、ため息をついた。
「本当に悩んでるみたいね。なにかあったの?」
「別に…」
「言いたくないなら、良いけどさ」
黒西が、俺に近づいてきた。俺が「なんだよ」と言うと、黒西は無言で鍵盤を見下ろす。
「向日葵さんの事なんじゃない?」
「…は?」
向日葵ばりの占いに、俺は愕然として黒西を見た。