いやいや、何を馬鹿なことを考えているんだ。別に俺たちはそういう仲でもないし…。
男の子が、俺に紙を差し出したときの、表情を思い出してみる。
真剣そのもので、でもどこか悲しげにも見えた。
違う。そんなくだらないことで、男の子は俺に伝えていたわけではないと思う。じゃあ、一体何なんだ?
『この世には、どんなに努力しても、どうにもならないことが、存在するんだよ』
何もかも、諦めたような言い方だった。
もしかして、向日葵は本当に、何か大きな悩みを抱えて、でも、それを解決するのを諦めているんじゃないのか?
明らかに、俺に何か隠そうとしている向日葵。何も言わずに、俺を向日葵から離そうとする男の子。
一体、なんなんだ?なにがあるんだ?
俺が見えないところで、なにかある。でも、一体何が?
頭が痛くなってきた。自分の事でも、簡単に答えが出なかった俺に、他人の事が分かるわけない。
俺は、ため息をつくと、改めて職員室に向かった。
「失礼します。二年二組の、空川日向です。小島先生に用があって来ました」
俺が断りを入れて職員室に入ると、「おー、空川か!」と、職員室の奥の方から声が上がった。
「こんにちは、先生。ちょっと聞きたいことがあって」
「おう。なんだ?」
小島先生のデスクの方に行くと、山積みの資料に、少し遠慮してしまいそうになるが、俺は小島先生と目を合わせて質問した。