いや、早まるな日向。このまま告白して、振られたりでもしたら、それこそ向日葵と一緒にいられなくなるだろう。
それに、それだけじゃない。問題は。
なんだか、俺はまだ、完全に向日葵と分かり合えていないような気がする。
向日葵自身、まだ完全に、俺に全てを見せてないような気がしてならない。
もちろん、向日葵も一人の人間だし、俺に教えれないことだってあるだろう。
でも、それ以上に、まだ信用されてないというか、気を使わせているというか…。
「…あ」
言葉が漏れた。考えに浸って、ふいに顔を上げたら、前方から、あの男の子が歩いてきたのだ。
そう。この前、向日葵とは仲良くしない方がいい、と紙に書いて俺に伝えた、耳の聞こえない男の子。
向こうもこちらに気づいたのか、軽く解釈してくれる。
と思ったら、男の子はポケットの中から、紙とペンを出して、何かを書く。
『まだ、向日葵さんと仲良くしてるんですか?』
俺は、とりあえず頷く。耳は当然聞こえないのだから、返事をしても意味がない。
ところが、男の子はそれ以上何も言わずに、立ち去ってしまった。
一体なんなんだ?二回目じゃないか。
そこで俺は、ある考察が頭の中をよぎった。
もしかしたら、あの男の子は、向日葵の事が好きなんじゃないのか?それで、俺と向日葵を引き離そうと…。