これ以上反論する力がなくなり、俺は机に突っ伏した。
上から、「空川をからかいすぎ」と、声に笑いが少し入った、水田の声も降ってくる。
確かに、愛が深まったのは事実かもしれない。
正確には、『俺の』愛が深まった、だが。向日葵と手を繋いだ思い出が、頭の中で再生するたびに、右手がむず痒くなる。
「…空川さ、向日葵さんの事好きなの?」
黒西の、冷静かつ、どストレートな質問に、俺は下げていた顔をばっと上げた。
「な、なななな何だよ、黒西まで!」
「動揺しすぎだよ。そんなんじゃ、白状しているようなもの」
何も言い返せない。
いや、確かにそうだ。自分でも、バカみたいに動揺しすぎだ。思わずため息をついてしまう。
「ほんとバカみてー。いい加減告ればいいんじゃん」
「うるせえ!」
俺は、伊藤のごもっともな意見に怒鳴ると、教室の出口に向かう。
「どこ行くの?」
水田の声が聞こえてくるので、俺は振り返って答えた。
「先生に、文化祭のピアノコンクールについて聞いてくる!」
教室を出ると、「ほんと分かりやすすぎるわぁ」と、伊藤のからかいの声が微かに聞き取れて、怒りと恥ずかしさがこみ上げた。
いやいや、確かに俺の根性のなさは、嫌というほど痛感している。
…今日、気持ちを伝えてみるというのはどうだろう?
そうだ。それが一番かもしれない。