顧問の先生も一応いるらしいが、特に常時いる必要もないらしく、何か質問があるときだけ、職員室に行って聞けばいいらしい
『ま、おかげで、俺がこの部屋を独裁だけどな!』
伊藤はそんな呑気な事を言っていたが、そんな調子では、美術部も崩壊まっしぐらだろうと、心の中で予想していた。
しかし、こんな破滅目前部活である美術に対しても、推薦というものが存在するのだから、部活動はないはずなのに、ピアノの推薦があることも、なんとなく納得できる。
そんなことを考えながら、俺は美術室に行くと、ドアを開けた。
「よ、伊藤。来たよ」
「お、グッドタイミング。今、ちょうど絵が出来終わったところなんだ。見てみろよ」
伊藤は、絵を固定しておく変なもの(後から聞いたら、イーゼルというそうだ)から、紙を取ると、俺に絵を見せてきた。
「どう?」
「いや、どうって…」
言葉が詰まってしまった。
絵を覗き込んだ瞬間、俺は思わず、黒西の絵を見たときのように、いやそれ以上に混乱してしまった。
伊藤が見せてきたその絵は、ひまわり畑の絵だった。
うまいことは認める。
細部まで細かく色分けされ、見事に鮮やかに描かれたひまわり。深く淡い緑で塗られた葉と茎。そして、その周りを楽しそうに飛んでいるトンボと、くっきり奥行きのある、入道雲と青空。