謎がすべてとけた。ああ、そうなのか、という言葉が、何度も心の中で連呼される。

本当に、その一言に尽きるからだ。
 

でも、そのあとの言葉が見つからなかった。
 

思いっきり話題を変えるのが正しいのか、感想を言えばいいのか。
 

結局、たどり着いた言葉は、
 

「ありがとう、向日葵」

だった。変に気を遣う余裕は、今の俺になかったから。
 

向日葵は、「ふー」と長い息を吐いたと思ったら、びっくり人形のように突然立ち上がった。
 

「私もピアノ弾きたい!」
 

そう叫んで、行き迷う素振りも見せずにピアノの椅子に座った。

何度もここに来ているから、何がどこにあるかは、きちんと向日葵も把握しているのだろう。
 

「何の曲を弾くんだ?」
 

向日葵に優しく問いかけると、「できるかどうか分かんないんだけど…」と言って、指を動かし始めた。
 

ややこしい和音の連鎖に、高速の十六分音符。

向日葵が弾いているのは、俺がさっき弾いた『革命のエチュード』だった。


ところが、すぐに和音でこけてしまい、向日葵は「あー」と悲痛な声を出す。
 

「それは難しいよ。特に、向日葵は目が見えないから和音だって押しにくいだろうし」 
 
「でもこの曲結構練習したんだよ。やっぱり、もっと頑張んなきゃダメかなぁ」