それに、一緒に向日葵もいてくれる。
よくわかんないけど、向日葵と一緒なら大丈夫な気がする。
何かがどうにかなるような気がする。
そう思ったら、エスケープしよう、という気持ちが途端に膨れ上がってきた。
時計を見ると、ちょうど時計は七時を指示(さししめ)している。
「よし!」
俺は声を出して気合を入れると、楽譜をゴミ箱に捨てた。
一瞬、ものすごくいけないことをやってしまったと、後ろめたさを感じたが、俺は「さようなら」とつぶやいて、部屋を出た。
そうだ、ただ逃げただけじゃ、警察に捜索願を出されるかもしれない。そんなことになったら大事だ。
俺は、自分の部屋のペンと、そこら辺に置いてあった裏紙を引っ張り出す。
『今日はコンクールをエスケープしようと思います。
ちゃんと帰ってくる予定なので、ご心配なく』
ちょっと、生意気すぎる文章かなと思ったが、別にいいんだ、と自分に言い聞かせて、紙を折りたたむ。
ゆっくり、音をたてないように階段を降りていく。
玄関に行くにはリビングを通らなくてはならないが、幸いドアは閉まっていたので助かった。
俺は玄関に着くと、折りたたんだ置き手紙を残して、靴を履きドアを開ける。
カチャ
本当に小さい音だったが、それだけでも俺は心臓が飛び跳ねた。
慌ててリビングを見るが、どうやら気付いてはいないらしい。