授業が終わると、俺は教室を出て、音楽室に行く前に、一度特別クラスに行ってみた。
 

一度向日葵のクラスを見てみたかったのもあるけど、なによりちゃんとたまには迎えに行くのもいいかなと思ったのだ。
 

特別クラスは、俺のクラスの真下にある。俺は階段を降りると、一階の廊下を進んだ。
 

やがて、『特別クラス』と書かれたプレートのクラスの前で止まる。
 

目が見えない。耳が聞こえない。知恵遅れ。
 

不自由なところがあるだけで、こんな風に人々はひとくくりにされてしまう。
 

この前、向日葵と二人で歩いていたときの事が蘇る。
 

あの、向日葵を軽蔑した瞳、態度。向日葵のすべてをみれば、そんな気持ちはすぐに消えるのに。
 

人は、人を上っ面でしか理解しない。
 

俺だってそうだ。皆、俺の事なんか何にも知らないのに。俺が、どんな目に遭ったとかなんて、想像もしてないくせに。



俺を、機械のピアニストとバカにする。悪魔と呼ぶ。
 

暗い気持ちになっていると、クラスから一人男の子が出てきた。
 

誰かにお辞儀をすると、こっちに気づいて、俺にも頭を下げてくれる。俺も、慌てて下げ返す。
 

この子は普通な感じがするけど、何か障害があるのだろうか。
 

すると、教室から、黒い髪を上でまとめた女の先生が、飛び出してきた。
 

そして、男の子の前に立つと、指を動かし始める。
 

あれは、手話?